―お仕事内容を教えてください。
地域の間伐材を使って木の食器を作っています。お椀とかスプーンとかですね。
―製作されるものは食器に限定しているんですか。
そうですね、はい。
私の師匠にあたる方が食に関わる仕事をしていたことと、食事という身近な行動に関わる物を作りたいという思いがあるので。木のものならってほかにも色々ご相談を受けたりもするんですけどね。
伊豆に来る前は新潟で家具作りをしていました。
―そうなんですね。伊豆市に来たきっかけはなんですか。
10年前に伊豆市で森の木を間伐して、その木材を使って器を作るという森林ボランティアNPOが立ち上がって。そこに参加するために伊豆に来たのがきっかけですね。
もともとろくろでの作業に興味があったのと、生活に根ざした物を作りたいと思ったので新潟の仕事を辞めてここに来ました。それがNPO発足2年目です。それから師匠に習いながら器作りをしてたんですが、震災後にNPOが解散しちゃったんです。そのあと私を含めた3人が残ってこの作業所をシェアして仕事をしています。
―木の食器ってどうやって作るんですか。
丸く切った木材を削って3ヶ月から半年くらい寝かせ、また削って寝かせ・・・を繰り返して作ります。
―木を寝かせるんですか!結構時間がかかるんですね。
削ると水分が出るんですけど、そうすると木がゆがんできちゃうんです。そのゆがみ具合を見ながら削るんです。
―すると、木によって何センチずつ削って、というふうに作業するんですか。
師匠はそう言ってたんですけど・・・まだまだ経験不足で。なのでまったく同じものをいくつも作るということはできないです。同じ木によってもゆがみ方とか微妙に違ってきますし。
―まさに職人技、という感じですね。おもしろさは?
作品を作ること自体はもちろん楽しいですし、師匠の考えに共感するのは、作ってそれを使ってくれる人との関係をつくるということが楽しいというか、やりがいがあるというか。やっぱり使ってもらってなんぼの物なので。自分が作ってそれだけで満足、ではなくて使ってもらって喜んでもらうのが一番大切だと思うんです。
―だからネット販売ではなく店頭販売なんですか。
そうですね。出来上がりがひとつひとつ違うので実物を見て選んでもらったほうがいいんです。
こういう物が欲しい、という個別の注文にはメールとかでも対応してますけどね。
でも間伐材の利用から始まった仕事なんで、注文の為に木を切るってことはほとんどありません。すでに切ってある木を使って色とか種類とか対応できる範囲で対応するように努力しています。
―注文はどんな人から受けるんですか。
NPO時代の利用者とか以前購入いただいた方からの口コミで知ってくださった方がほとんどですね。
あとはワークショップで知り合いになった方とか。
去年の夏は、萬城の滝で周辺で間伐したひのきでスプーン作り体験をしたり、伊豆総合高校の文化祭にも参加させてもらったんですよ。今年は静岡市のほうでも。そこでいろいろな人に知ってもらえました。
でもひとりで製作、営業、接客販売をするので今以上に手を広げることが難しいんですよね。
―伊豆市の良いところは。
周りの人々が支えてくれるというか、盛り上げてくれるというか、声を掛けてくれる人が多いところですね。
それもあってNPO解散後も伊豆市に残ろうと思いました。
自分だけでやって完結する仕事ではないので、周りに協力してもらわないとどうしようもない。近所のおじちゃんが庭で切った木とか持ってきてくれるんですよ。「これ何の木ですか」って聞いても、「うーん、わかんね!」って言われちゃうんですけど(笑)。
―今後の展望は。
ここの食器を買うために他の地域から人が来てくれるようになれば、と思います。
この場所って大通りから外れてるんで観光客がふらっと立ち寄る場所じゃないじゃないですか。
それでも伊豆に木の器買いに行こう、となってくれたら良いなと。
―観光の目的のひとつに、ってことですね。確かにそれ、素敵です。
本日はありがとうございました。