第9回伊豆市を彩る(色撮る)写真コンテストは、応募作品300点以上におよび、厳正な審査の結果、長口宮吉賞をはじめ、全20点の入選作品が発表され、表彰式が行なわれました。
審査員長の選評とともに、各作品をご紹介します。
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本年もどのような作品との出会いがあるか期待を込めて審査に臨みました。
応募作品が前年に比べ若干減ってしまったこと、祭りや年中行事、スポーツイベント等を含む人々の日常の一端が伺えるスナップショットや、街の様子と伊豆の自然環境をバックグラウンドとする情景写真が少なかったことはやや残念です。祭りやスポーツイベント等は開催期日や当日の天候などの成約を受けるため、撮影のタイミング自体難しい面がありますが、是非より多いチャレンジを望んでおります。
伊豆市は西伊豆の海岸を始め天城連山の豊かな自然と渓谷美、歴史を秘めた修善寺など本年も季節の色と自然をモチーフと作品に力作が集まりました。デジタル時代を反映して一層身近となった夜景や星空の幻想は実にリアルで魅力的です。さらなる創造性の高い作品の応募を望んでおります。
(審査員長:写真家 山口高志)
作品名:長口宮吉賞 「銀の小径」
色:白
撮影者:野口 浩毅
撮影地:万三郎岳
選評:画面を見ていると冴え冴えとした山の冷気に包まれ、登ってきた山路を振り返り、一斉に花を咲かせたような霧氷の森の美しく森閑とした情景に目を奪われている臨場を感じます。冬の天城縦走路の静寂をリアルに伝えています。
作品名:軌跡の輝き
色:黄金
撮影者:筒井 章
撮影地:大平柿木
選評:長秒露光による夜間撮影から生まれた幻想の情景。照明灯に照らさた道路が川の流れをイメージし、沼津の街灯りとの相乗で恰も夜空を明るく照らしているような印象です。巨大な刷毛で拭ったような巻雲の流動がドラマ性を盛っています。
作品名:あそびに来ました同級生
色:紅
撮影者:村田 武雄
撮影地:修善寺(桂橋)
選評:三人それぞれの仕草と笑みがとても自然で楽しそう。浴衣の先に覗く欄干の金色の擬宝珠をアクセントに覗かせ、修善寺温泉らしさを伺わせる背景描写も程よく、上手いスナップショットです。
作品名:大夕焼け
色:紅
撮影者:山口 勉
撮影地:だるま山高原レストハウス
選評:シルエットと夕映えの色合いのみのシンプルな画面構成により、冨士山が具える秀麗且つ神聖さが一層際立って映ります。画面の左手の鮮やかなバラ色から上空へと、雲の層の濃淡と共に徐々に色合いを深める色彩変化が魅力です。富士の中腹に掛かるベール状の靄も良い効果です。
作品名:元旦富士を仰ぐ
撮影者:加藤 みどり子
撮影地:達磨山頂上
選評:タイトルに相応しく、快晴の元旦を迎えた大気の清浄さが画面から伝わります。画面の対角線を活かし、富士に望むハイカーを左隅に配置して富士までの遠近を盛り、白雪の南アルプスで画面を裁ち落とし、パノラマ的広がりを生んだ画面構成が雰囲気を盛りました。
作品名:霧幻の森
撮影者:高田 幸久
撮影地:天城山
選評:天城山中には個性的な樹形をしたブナが点在しています。実際に対象として向かうと実にバランスが取りづらく手古摺ります。が、林床、背景を含め、樹形の特徴と森の中での存在の大きさ、力感を的確に引き出しています。天城のブナ森の森厳さが伝わります。
作品名:紅紅葉を照らす
撮影者:牧野 清明
撮影地:修善寺温泉
選評:多重露光作品と思われますが、それにより、晴天時の強い日差しに照る紅葉の明暗差とコントラストが抑えられ、ムーディな映像になっています。ほの暗い樹林を背景に取り込んだ朱の欄干も画面の明暗差を補うとともに、修善寺温泉らしさを感じさせます。
作品名:秋を彩る
撮影者:佐藤 泰弘
撮影地:狩野川記念公園
選評:穏やかに晴れた晩秋の日差しに、色付いたイチョウが一際浮き立って見えます。若干、緑を含むのも絶頂に至る直前の勢いの良さを感じます。並木の連なりと堤の奥行きを引き出すカメラポジションが良く、望遠レンズの描写の特徴である、程よい距離の圧縮効果が効いています。
作品名:激波
撮影者:山下 喜幸
撮影地:伊豆市土肥
選評:タイトルとされた語感にピッタリの勢い、波の瞬発力をリアルに捉えています。波が砕けた後、ズンと岩がズレたのではと思わせる力感があります。高速シャッターならではの飛沫の精細な描写と冨士山の対比も絶妙のバランスです。
作品名:海渡るサップ
色:白
撮影者:勝呂 拓也
撮影地:土肥海水浴場
選評:サップ(SUP)はスタンドアップパドルの略で海上を散歩する、新感覚の海のスポーツ。近年、目にするようになり不思議な乗り物と実感。超望遠域での撮影と思われますが、撮影時の天候と相まって手前の海面がノッタリ盛り上がって描写され、何とも幻想に満ちた映像です。
作品名:奥山からの夜景
色:黄金
撮影者:藤井 駒一
撮影地:修善寺奥山
選評:修善寺奥山からの撮影とあるので、画面下方のシルエットは伊豆山稜。駿河湾の手前に望める街の灯は戸田のようです。その先には夕焼けの名残と深い群青を湛えた薄明の空が徐々にトーンを沈め、旅愁と言いますか寂寥を覚える情景。露光秒数をもう少し加え画面を一息明るく再現したい。
作品名:風に揺れる七夕飾り
色:緑
撮影者:石井 正彦
撮影地:修善寺虹の郷
選評:何とも心地よい映像です。折から吹き付ける風にはためいて、色とりどりの七夕飾りが発する軽快な風音が届きそうです。とっさの出来事でしょうがシャッタースピードとタイミングがグッドです。その様に見入る女性の佇まいと相まって、爽やかな緑風をイメージします。
作品名:西海岸より富士を臨む
色:青
撮影者:鈴木 三與志
撮影地:伊豆市八木沢
選評:土肥港へ向かうフェリーを撮影するには絶好の撮影位置を選択されました。程よい高さがあるため船体と海面との分離が明確で、フェリーの進行感がよく現れています。スッキリと晴れた空に聳える冨士山との対比バランスも緊張感があり、一層の高度感を感じます。
作品名:挑戦者たち
色:自転車
撮影者:室野 定弘
撮影地:日本サイクルスポーツセンター(ツアーオブジャパン)
選評:ゆったりと弧を描くバンク、その背後には残り少なくなった残雪を被る冨士山がレースの行方を見つめるように覗ける。カメラポジション、シャッタータイミングが的確で疾走感がよく現れています。バンクに映る選手の短い陰が日差しの強さ、夏めく季節を盛っています。
作品名:行楽日和
色:青
撮影者:石井 眞理
撮影地:伊豆市牧之郷
選評:稲穂の伸びかけた青田の広がり、吸い込まれそうな深い夏空に箒木で振り分けたように伸び伸び巻雲が広がる。駆け抜けんとする列車をフレームの際で捉え疾走感を強調したタイミングの良さが光り、旅立ちを掻き立てる壮快なショット。
作品名:花鳥風月
色:白
撮影者:鈴木 美喜男
撮影地:伊豆市佐野
選評:雲海は気象的に春と秋に多く見られます。富士の残雪の様子から5,6月でしょうか。とても緻密に画面構成されています。特に、下方に配置されたシルエットの樹木群が画面を引き締めるとともに、日の差しかけた雲海が胎動し情景が大きく変化する様をイメージさせます。
作品名:思い出づくり
色:緑
撮影者:大石 良則
撮影地:修善寺温泉(竹林の小径)
選評:就寝前の夕涼みに来られたのでしょうか。水銀灯に浮かぶ竹林が軽やかにく揺れて、その色合いと相まってとても涼しげに映ります。照明を反射した竹の小径の円形テーブルが楽しげな語らいの一時をより和ませる効果となっています。
作品名:どちらを見ても
色:紅
撮影者:山口 勉
撮影地:出会い橋
選評:猫越川と本谷川が狩野川へ合流する出会い橋の秋模様。橋上のデッキから見下ろす人物をポイントに紅葉をバランスよくフレーム内に取り込み、その対比効果で彩りの鮮やかさを際立たせています。
デッキ上の人物の視線を意識させることで、画面外の様々な情景が想像できます。
作品名:夢花火
色:黄金
撮影者:藤井 昭浩
撮影地:土肥海水浴場(土肥サマーフェスティバル)
選評:多重露光による映像と思われますが、多様な色彩と大小様々な形状の変化を見事に捉えています。土肥の浜を埋め尽くす観衆との配置バランスも的確で、共に、この華やかな色彩の競演に感嘆の声を発しつつ観覧している気分です。
作品名:伊豆に舞い降りた雪の妖精
色:白
撮影者:川口 信芳
撮影地:金冠山
選評:金冠山から撮影されたものですが、画面下方の新雪を被った尾根の隆起がとてもリアルで冷え込みの程を伺わせるとともに、星空に浮かぶ冨士山を一層幽玄に見せます。左右の街明かりを反映した霧の浮遊も幻想感をもる効果です。