第1回伊豆市を彩る(色撮る)写真コンテストの審査の結果と、受賞作品のご紹介。
審査員長の選評とともに、各作品をご紹介します。
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※入選作品について
第1回伊豆市を彩る(色撮る)写真コンテストには全国の117人のみなさまから、673点の作品が寄せられました。この中から、写真家の山口高志先生の審査により、28点の入選作品が決定しました。
作品名:二人の世界
撮影者:望月 信明(静岡市)
色:紅
撮影地:土肥海岸
【選評】海面を明るめ、空をオレンジに染める夕焼け。画面の左手に覗くシルエットは丸山の先端か。渚に佇む二つの人影。と、三つの要素がバランスよく係わり、夕暮れの情感ドラマ性を高めている。土肥海岸らしさもみごとに現されている。
作品名:里山の秋
撮影者:渡辺 晴美(沼津市)
色:紅
撮影地:伊豆市下船原
【選評】
畦の緑に燃えるようなヒガンバナの紅。納屋のような木造家屋を縁取るように石垣が伸び、それを境に澄んだ青空が一際高く広がる。木立を揺らす軽やかな微風や虫の音が聞こえそうで、山里ののどかさが画面に満ちている。
作品名:想い出の散策①
撮影者:正木 剛(沼津市)
色:紅
撮影地:修善寺温泉
【選評】
修善寺温泉と言えば、桂川に掛かるこの桂橋が思い浮かぶ人も多いのでは。レンズ特有の遠近感を活かし、赤い欄干をそぞろ行く浴衣姿が目を引く。画面内の色の取り合わせがよく、心地よい寛ぎが感じられる。
作品名:田植えの日
撮影者:佐藤美栄子(静岡市)
色:緑
撮影地:伊豆市湯ヶ島
【選評】
灰白色の空を映した田面と、しなやかな曲線を描く畦。畦を縁取る樹木の緑。棚田を見守るような人物の佇まい。全体のバランスが程よい上、田植を直前にした季節の情趣が伝わり、実りの情景がイメージされる。
作品名:どんど焼き
撮影者:中村 和嘉(上白岩)
色:青
撮影地:伊豆市上白岩
【選評】
画面のすべてを包むような、和らいで落ち着いた群青が幽玄感を盛り立てている。寝入ったような静けさの漂う家並の奥に、淡く富士が覗け、立ち昇るどんど焼きの炎とよい対となっている。炎を囲む人人のしのびやかな話し声が洩れそうな奥床しさが魅力。
作品名:ワサビ収穫時
撮影者:石川 金吾(静岡市)
色:緑
撮影地:伊豆市湯ヶ島
【選評】
雨の中での収穫でしょうか。画面のすべてが瑞々しく、ワサビ田を流れる軽快な水音が伝わってくるような心地となります。丹精籠めて育てたワサビを念入りに洗う、人の心根までが響くような作品。若干、ピントが甘くなったのが惜しまれる。
作品名:網干し
撮影者:滝井 千恵子(静岡市)
色:紅
撮影地:八木沢海岸
【選評】
まず、目を惹かれたのが色彩の対比バランスのよさです。網の赤と背景の青。にぎやかな要素の対比ですが、画面がうるさくならず、干してある網の赤の繰り返しが程よいリズムを刻んでいる。その間から富士山が覗け、西伊豆の海辺の雰囲気がよく醸されている。
作品名:染まる旅人岬
撮影者:深沢 真(下田市)
色:黄金
撮影地:旅人岬
【選評】
土肥海岸の旅人岬に立つ、ブロンズ像と対をなすようにカップルを配した画面構成が、この情景を盛り上げました。素晴らしい夕焼けを望む二人の親密感を的確に表現されました。二人にとり、この夕焼けは長く記憶に残るでしょう。
作品名:満開
撮影者:川井 孝(神奈川県南足柄市)
色:白
撮影地:船原川上流
【選評】
シロヤマザクラと思われます。が、これ程花付きがよく、絢爛とした一本はみごとの一言です。撮影時の光線状況が申し分ありません。画面下方のトーンがやや沈み、それにより、サクラの立体感、存在感が際立ちました。このようなサクラと出会ってみたい。と、思わせるインパクトがある。
「ブルームーントワイライト」(青)
下村 俊明(下船原)・修善寺温泉
撮影対象を見上げたアングル、構図の的確さが光る作品。シルエットの教会の尖塔、葉を落とした大樹の樹影、その上に乗る三日月の配置が絶妙のバランスを保っている。大気の冷えをイメージさせる色合いも魅力です。
「サークル」(青)
由井 輪人(横浜市)・八木沢
八木沢海岸から、夜間の長時間露光撮影により、肉眼では見られぬ光景を適確に映像化されました。群青の空間に星が円軌道を描き、富士市街のコンビナートの明に富士が悠然と浮ぶ。幽幻とした夜のドラマを感じます。
「駿河湾フェリーと富士山」(青)
藤井 明浩(松崎町)・土肥海岸
画面が実にしっかりと安定している。発色が素晴しく、澄んだ大気の心地よさが感じられる。そして、何よりの魅力が、富士山の優美にして雄大な佇まいをみごとに表現されたこと。土肥港に向うフェリーとの係り、タイミングのよさです。
「入港する富士」(青)
高橋 利篤(富士宮市)・(土肥)
澄んだ青空にスックと伸びたヤシ。その間に、カラフルなフェリーが停まる。アメリカ西海岸を思わせる、シンプルで明快な画面構成に目を惹かれます。ヤシの幹を明るめた日がとても効果を発し、画面の立体感を盛りました。左右の写り込みをスッキリ処理すると、さらに、グレードが上がりました。
「天城300年の森」(緑)
鈴木 美喜男(木立野)・天城小岳
通称、ヘビブナと呼ばれるブナの大樹。撮影ポイントの反対側から見ると、正に、大蛇が襲うような迫力がある。本作品は広角レンズを用い、至近から根太を仰ぎ見て、ブナの生命と存在感の強さをみごとに表現された。天城山系の奥深さが感じられる作品。
「緑の風吹く頃」(緑)
露木 義光(沼津市)・湯ヶ島長野
タイトルとされた通り、本作品を目にしていると、棚田を吹き抜ける緑風の心地よさが伝わる臨場があります。撮影ポジション、アングルがよいことで、手前の棚田から背後の山なみに向い、視界が開けていく壮快な気分となります。
「春のブナ林」(緑)
渡辺 玲子(松崎町)・伊豆山稜線
撮影地はツゲ峠のブナ林と思われます。この地におそらく、200年以上に及び生命を保っている巨樹群の佇まいの大らかさを、よく引き出している。生育環境、林立する様が伝わります。が、やや平面的な印象を受けます。インパクトのあるものを据え、画面構成されるとよいでしょう。
「浄蓮の山葵棚」(緑)
永田 勇(静岡市)・浄蓮の滝
浄蓮の滝の掛かる、渓流沿いに築かれたワサビ田の環境をうまく表現されました。階段状に奥へ続くワサビ田の遠近が程よく、田一杯に茂った、ワサビの葉の深い緑が心地よく映る。ワサビが生長する瑞々しい季節が感じられます。
佳作 「深い秋」(黄金)
中西 敬一(静岡市)・修善寺奥の院
秋の日差しを受け、周囲の木立の緑を振り分けるように、イチョウが彩かに輝く。その彩りを食い入るように望む後姿の人。奥の院に訪ねきての、正に、至福のひとときと申すべき光景。みごとな彩りを共に享受しているような感慨を覚えます。
「明日に向う」(黄金)
池田 勤(京都府)・旧天城トンネル
天城と耳にすれば、この旧天城トンネルを思う人が多いのでは。天城の象徴ともいえる情景です。写真構成法の一つにトンネル構図があり、本作品はそれを地でゆく感がある。ノスタルジックな明と小さく覗かせた坑道口とを対比させ、多数の物語が生まれたトンネルの情感を盛っています。
「落葉」(黄金)
王舟 祥子(静岡市)・天城湯ヶ島
洗濯板状の板橋?に散り敷いた落葉が日を受け、暖かみのある輝きを放っている。褐色と灰色のみで構成された、シンプルで落ち着いた画面が、小春の日の温もり晩秋ののどかさを物語っている。そして、目前にしのびくる木枯しの季節をも。
「稲刈」(黄金)
松下 博(伊豆市)・天城湯ヶ島長野
荒原棚田の稲刈の情景をタイミングよく捉えています。稲刈人と、ゆるやかな曲線を持つ、刈り残しの稲穂。その背後に建つ茅葺民家との組み合わせにより、刈入れの季節感と山里の情趣を豊かに歌い上げています。
「花咲く丘」(黄金)
内田 国男(西伊豆町)・伊豆市菅沼
富士山を望む高台のスイセン畑。温暖な伊豆半島とはいえ、キズイセンがこれ程の規模で咲き誇っているのを目にした覚えがありません。スイセン特有の甘さと鼻孔を突くような高い香りが風に乗り、渡ってくるようです。
「秋の流れ」(紅)
波木井 芳雄(富士市)・世古峡
昼なお暗い、世古峡の深い谷底を飛び石のように刻んで覆う、ヤマモミジの彩りの鮮やかさ、リズムのよさに目を惹かれます。渓谷の流れを境いとして、鮮やかな朱と散りそめの落ち着いた色合いのモミジを対峙的に配したフレーミングが、効果を上げました。
「ようこそ伊豆へ」(紅)
小宮 聴(東伊豆町)・旧天城トンネル
旧天城トンネルの出入口をバックに、踊り子に扮した女性をけれんなく捉えたことに、好感を持ちます。小柄で愛らしく、自然な印象を与える笑が明るく古風な衣装によくマッチしている。様々な職業、目的でこの天城峠を行き交った人々が偲ばれる。
「雪の花」(白)
山口 泰子(伊豆市)・船原
温暖なイメージの強い伊豆。ですが、山間地では、時として、本作品に見る如く素晴しい情景との出会いが叶うのでしょう。すべての樹木が白銀を纏い、中で、主役の一本が抜きんだ輝きを放っている。白雪の諧調がしっかり描写され、画面に安定した美しさがあります。
「雪が降ったよ。うれしいな。」
中西 宏嘉(伊東市)・天城高原
シチュエーションがよいですね。家族でドライブの途中でしょうか。思わぬ大雪に勇んで雪だるま作りに励んだ様が思い浮かびます。灌木を用いた急造のだるまの姿がユーモラスで、その状況が分るよう、背景にバランスよく伊豆スカイラインの料金所を取り合わせた作画が巧みです。
「雲海」(白)
大木 紀代子(伊豆市)・天城高原
画面を見つめていると、徐々に視界と気分が開けてゆくような、浮遊感が起こります。山なみを埋めた雲海がゆったり漂う様。と、その動きを封じるような上空の雲の広がり、その迫間で天地を分つ淡いレモンの色彩が目を惹き、スケールを感じます。